栗原市栗駒「ホープフルピッグ」代表 高橋 希望さん
鎧坂 文菜アナウンサー 取材リポート
栗原市で養豚業を営む高橋さんは両親が以前名取市で養豚業を行って
いましたが、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けました。当時、
高橋さんは東京で仕事をしていましたが、発災後は東北に物資を送る
ボランティア活動に勤しんでいました。その最中、津波に流されてし
まったと思っていた2000頭の豚のうち5頭が生きて見つかるとい
う奇跡が起きました。つながった命を奪う訳にはいかない。高橋さん
の母が牧場仲間のいる東京・八王子の農場を間借りし「有難豚」と名
付けて大切に育てていました。
ところで、養豚業は決して儲かる仕事ではありません。高橋さんは経
費を抑え、かつ豚にストレスを与えず、育てる方法に取り組むことで
従来の形にとらわれない復興の在り方を模索していきます。こうした
中、国連が定めるSDGsの考え方に基づいた「アニマルウェルフェ
ア」の実践に取り組み始めます。八王子から宮城県に戻ってきたのは
去年の5月。震災から9年が経っていました。これまでは「繁殖」
「生育」「運搬」「加工」の作業が別々になっている畜産のスタイル
を誕生から1頭1頭トレースする形を作り上げていきます。東京の大
学生と繋がりながら「食べ物」の価値を知る営みにも取り組んでいま
す。人間は大切な命をいただきながら生きている。であれば、人間の
意識で無駄を作り出すことを止める。動物を動物らしく育てること、
それは生産者と消費者の相互理解に繋がっていくと高橋さんは考えて
います。新たな養豚のスタイルを追い求める挑戦が続きます。