Archive for 2018年12月10日

12月10日放送

山元町 結工房
林田悟志アナウンサー取材リポート

JR山下駅前の一角にある結工房は、カフェや直売所などが入った複合施設が今年の3月11日にオープンしました。
山元町農業生産法人「山元いちご農園」が被災地支援で支援活動を続けている東京のNPO法人「高麗(こうま)」が共同で開設しました。「結(ゆい)」は助け合いの意味合いを持っています。「東北の復興なくして日本の未来はない」という信念のもと、若い人が夢と希望を持って働ける場と仕事づくりを提供しています。この工房では、イチゴ栽培時にピアノ演奏を聴かせるなど独自のシステムを導入、最初は6畳の小屋から始まりイチゴ栽培の合間にコーヒー焙煎なども手掛け、今はカフェも併設の工房となっています。
震災から7年9カ月、オープン時は人通りもまばらでしたが今では地元の人たちも利用するなど徐々にお客様も増えました。エチオピアの豆を直輸入して、コーヒーに合うようにお菓子作りを行っています。珍しい白いコーヒーもおすすめです。体に優しいコーヒーやグルテンフリーのお菓子を扱うなど工夫が施されているのがとても特徴的です。
東京生まれ東京育ちの小沢店長は、山元町の暗くて何もない状況に寂しさを感じた時期もありました。しかし結工房はまだ始まったばかり。来ただけで元気になるようなカフェを目指し、今後も山元町の発展を見守っていきたいと話してくれました。

2019ニューイヤーコンサート 石巻市立湊中学校 加藤仁久先生
藤沢智子アナウンサー取材リポート

湊中学校の加藤先生は美術の先生ですが、音楽が大好きで、ご自身もチェロの演奏や編曲を手掛けています。息子さんもプロの音楽家として活動していて、湊中学校の吹奏楽部のメンバーやOG、保護者、知り合いで「春爛漫オーケストラ」を結成しています。先生ご自身はお母さまと娘さんを震災で亡くされていますが、そのお葬式の代わりに2011年8月6日に「プレイルネッサンスよし子とあや子を心でつなぐ音楽会」を主宰しました。
その音楽会を催したことをきっかけに、多くの人からリクエストをもらい石巻市で再びコンサートを開きその後、石巻市立湊中学校の吹奏楽部の顧問になったことをきっかけに、毎年3月に希望の春爛漫コンサートを開催しています。また、自らが訪れたオーストリアでの演奏会がとても印象に残り、自主的に地元の人たちが集まって地元のために演奏するコンサートになりました。2018年のニューイヤーコンサートには250人の方が訪れ、なじみのあるクラシックやポップスの演奏を楽しみました。
2019年は1月5日(土)の開催です。場所は石巻市立渡波小学校の講堂、入場は無料となっています。皆さんもぜひ、音楽を楽しみに、加藤先生に会いに行ってみてはいかがでしょうか。

12月3日(月)放送

仙台市宮城野区 岡田小学校ハマヒルガオプロジェクト
林田悟志アナウンサー取材リポート

ハマヒルガオとは海岸の砂地に生える多年草で、震災による津波被害で東北の沿岸部は多くの地域で流出してしまいました。しかし、仙台市宮城野区岡田の新浜海岸ではその一部が残っているのが発見されたため、そのかつての自然を取り戻そうと「ハマヒルガオプロジェクト」が発足しました。岡田小学校は、仙台市内で一番海に近い小学校で、唯一津波の被害があった小学校です。地域も大きな被害に遇いました。
その岡田小学校では、2016年からこのハマヒルガオやハマナスの苗を子どもたちが育て、それを海岸に植栽して海浜植物を増やしていく活動を行っています。この活動が始まる前は、地元の海に行ったことのない児童がたくさんいました。しかし活動を通じて、海に初めて訪れた子供たちは美しさに感動し、地元の海を大切に思うようになりました。
子どもたちは「ハマヒルガオはきれいな花」「岩手から福島まで、この新浜しかハマヒルガオがないといわれて力強く生き残っているからもっと広げていこうという気持ちが強かった」など、ひとりひとりが思いを馳せてこの活動に参加しています。「小さな花」を植えていく地道な活動が地域の人を豊かにしていく…子供たちのそんな思いがつまったプロジェクト、今後も地域復興のひとつとして活動が継承されていきます。

南三陸町の大工 マイケルさん
林 朝子アナウンサー 取材リポート

南三陸町に住んでいる杉原敬さん(通称マイケルさん)は、アメリカ人の母と日本人の父を持つ町の大工さんです。震災発生2か月後、設計士の知人から「応急仮設住宅建設」の手伝いを福島県でやってみないか、と誘われてから初めて東北を訪れました。
マイケルさんはその後、石巻市で雑貨や兼集会所の建物の施工に携わるようになり、5年前、埼玉県から石巻市に移住してきました。様々な復興事業に携わってきましたが、特に石巻市の漁師さんの家の施工をしている時に、生活と住居のかかわりを深く知るようになります。
震災後7年が経過し、せわしい気持ちが落ち着いてきた、と肌で感じている杉原さん。それは震災直後は駆け足状態で復興に向かっていたみなさんが、元の姿に近づきたい、早く家を直したいという気持ちから、余裕をもって「これから何がしたいか」と考えられるスタート地点に立っているように感じたからです。
現在は、緑と海の幸に恵まれた街に魅力を感じ南三陸町戸倉に移住しました。「木工房 瑞(みつ)」という自分の工房で、地域の木材を使った家具作りや伝統工法木造住宅建築を行っています。「個」の復興から「街や地域の復興」に向かう時期、マイケルさんはそのみんなのビジョンを叶えるために自分の技術を活用していきたいと思っています。