Archive for 2021年1月25日

1月25日(月)放送分

山元町
(株)やまもとファームみらい野 島田社長
藤沢智子アナウンサー 取材リポート

山元町にあるやまもとファームみらい野は、震災の津波で被災した山元町東部地区で整備された大規模圃場を使い、野菜生産に取り組む、農業生産法人です。設立の経緯や現状、今後の展望などを取材しました。
やまもとファームみらい野は2015年に設立し、農業としては一からスタートしました。土地はありましたが農機などは周囲に借りたそうです。
苦労したのはやはり土地の整備。南北8キロにも及ぶ圃場内には、4集落の跡地があり、見た目以上に排水路などの整備が大変だったそうです。集落なので、人が住む家があったため、家によって土の環境が違います。また、雨が降るとぬかるんでしまい、そのあたりも苦労したということでした。
農地として整備ができてからは、玉ねぎからスタートしたそうです。そこからネギやに人参など、天候に左右されにくい土のものをメインに栽培の規模を拡大していきました。現在では圃場の環境も良くなり、生産も安定してきたため、設立当初によくしてくれた地元の方々に恩返しの気持ちを持って、これからも生産を続けていきたいとお話しされていたのが印象的でした。
また、現在生産しているさつまいもが人気で、干し芋を作るなど、加工にも力を入れています。今後はさらに経営安定を目指しつつ、後継者の育成にも携わりたいとお話しされていました。
実際に圃場の前にあった集落に住んでいた方々からも、実りの多い生産地となったことが嬉しいとの声があるそうです。島田社長は、その人たちに恥じないような生産をこれからも目指していきたいとおっしゃっていました。

1月18日(月)放送分

丸森町
東北芸術工科大学 照井麻美さん
小野寺穂実ディレクター 取材リポート

丸森町で「謎解き防災バラエティ展 猫神さまとまあるい森の暮らし術」を行っていたのは、東北芸術工科大学デザイン学部コミュニティデザイン科4年の照井麻美さんです。イベントのコンセプトは楽しく防災を学ぶこと。丸森町で有名なオオイチョウと猫神さまが登場するストーリーの中で、謎解きをしながら防災のヒントを楽しく学んでいく、というものです。
このイベントをやろうとしたきっかけは、丸森の台風直撃を受けて、自分にもできることを考えたことだといいます。そこで目をつけたのが訓練でした。自分が経験してきた防災訓練や避難訓練はあくまで形式的にこなすだけで、いざ災害が起きた時にしっかりと訓練を活かせるのか、避難した後に生き延びる行動がとれるのか。日頃から防災について考えることが大切だと考え、今回のイベントを企画しました。
照井さんは、大学での授業とは別に、論文を読んだり、実際に台風被害に遭われた方々にインタビューをするなどして、防災について独学で勉強したそうです。こうして学んだ防災の知識をいざ多くの人へ発信しようとした時に、楽しく防災について学んでもらいたいと思って工夫したのがフィクションのストーリーと謎解きでした。謎解きが完成すると、防災に関するパンフレットを手に入れることができ、家に帰ってからも見直すことができる仕組みです。
最後にはイチョウに見立てたカードがたくさん吊り下げられている展示がありました。そこには謎解きの参加者が日頃意識している暮らし術が書かれていました。ここの展示を見るだけでも防災への意識がかなり高まります。
照井さんは今後、この展示をより多くの人に広めていくためのコンテンツを考えていきたいとのことでした。卒業制作でも発表を行うそうです。今回の取材を通して、災害や防災について改めて考えることはもちろん大切ですが、日常の暮らしにおける生活の知恵だったり、日頃の人間関係も防災につながるのだと感じました。何も起きていない今だからこそこうした普段の生活を見直し、日常の生活の中でも防災への意識を持つべきだなと思いました。

1月4日(月)放送分

仙台市若林区
一般社団法人ReRoots
三浦菜摘アナウンサー 取材リポート

先月13日に多賀城駅前で行われたスイートポテト販売会の様子を取材しました。ここで販売されているスイートポテトは、「おいもプロジェクト」という活動の一環として若林区で作られたサツマイモを使用しています。一般社団法人ReRootsという、仙台市の各大学に通学する学生らをメインに活動している団体が、おいもプロジェクトを主催しています。メンバーの一人、大学2年生の飯田さんによると、ReRootsの活動は農業再生とコミュニティ活動だといいます。このコミュニティ活動の一つとして行われているのが「おいもプロジェクト」で、さつまいもの苗植えから収穫までを体験できます。
ReRootsは去年6月、若林区に「仙台いも工房 りるぽて」というお店を出店しました。理事の二木洸行さんは東日本大震災後、大学進学で宮城にきて、ボランティアを行う中で、農地の復興が必要だと感じたそうです。そこからReRootsのメンバーは、若林区の農業再生に着手しました。農業だけでなく、地域おこしを見据えて、中長期的なコンセプトを経てて活動していらっしゃるということでした。
二木さんは震災から10年を迎えるにあたり、これからは地域おこしの段階に入るとおっしゃっていました。復興してきたといっても、若林区の農業には、持続できるかの課題があるといいます。農家の高齢化も進んでいますが、ReRootsからは5人の新規就農者が出ています。こうした取り組みを知り、若い方が地域に入って、地域の未来について考えることが大切なのだと感じました。

1月4日(月)放送分

仙台市
東北学院大学 松坂東吾さん
野口美和アナウンサー 取材リポート

今回のテーマは「ボランティア」。美里町出身の松坂東吾さんを取材しました。松坂さんは現在東北学院大学の3年生。東北学院大学の志望理由は、災害ボランティアステーションで4年間ボランティアを行いたいから、というものでした。東日本大震災当時は、松坂さんは小学5年生。美里町は内陸であまり被害もなかったことから、自分に「被災者」の認識がなかったそうです。しかし、後日新聞に載っていた県内の沿岸部の写真を見て、ショックを受けたといいます。高校生まで何もできなかった悔しさの反動で、現在大学では、被災地のイベントの運営補助や、災害公営住宅でのお茶会の開催など、積極的にボランティア活動に取り組んでいます。
最近では、その活動の幅は学外にも及びます。なんと「山元語り部の会」という団体から、山元町で語り部をしてほしいとの委嘱を受けました。松坂さんは山元町の出身ではありませんが、松坂さんのボランティア活動の中で山元町に通っていたこともあり、その姿勢を見て今回の話があったとのことです。
松坂さんは突然の仕事に不安や戸惑いがありましたが、自分が当事者でない分、聞き手として同じスタンスで語り部活動を行うことができると、自分の立場をプラスに捉えるようになったそうです。等身大の自分で一生懸命に伝えようとする松坂さんの姿に感動しました。
まもなく震災から10年が経とうとしますが、ボランティアの現場に立ち続ける松坂曰く、まだまだボランティアを必要としている方は多いといいます。震災当初、支援物資やがれきの撤去など、顔と顔を見て行うボランティアだったのに対し、現在は心と心のつながりが大切な「伴走型」のボランティアが主だということです。
こうしたボランティアを目指しつつ、今後も人のために最大限できることを施していきたいとお話しされていました。松坂さんのように、誰かが被災地の現状を知るきっかけを作れるよう、私も放送を通して情報を伝えていければと思いました。