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5月16日(月)放送分

名取市高館出身 画家 杉崎靖夫さん
伊藤若奈ディレクター 取材リポート

2022年3月に名取市文化会館の2階ギャラリーで名取市高館出身の画家・杉崎靖夫さんの東日本大震災後の閖上地区の復興の軌跡を題材とした絵画展が開催された。
震災後から閖上に通って絵を描き、復興していく様子や変わりゆく閖上の風景、人々の暮らしなどを描いた作品は油彩・水彩あわせて42点。そして作品をまとめた画集『3.11ふるさと後刻記』を自費出版した。
現在は神奈川県川崎市にお住いの杉崎さんだが、震災当時は実家の名取市にいた。翌年の2012年3月から閖上に通い、「ふるさとが再生する様子をキャンバスに記録し、次世代の記憶に残したい」という思いのもと絵を描き続けた。
最初の作品は『望郷』。日和山を西から見て、遠くに蔵王連峰、近くに被災の爪痕が描かれている。空の色が印象的で、震災から1年経っても雲が普通じゃないと感じたそう。
2014年には愛島東部仮設住宅の風景を題材にした『ひまわり』を描いた。仮設住宅で遊ぶサッカー少年たち、それをベンチで見守る住人を、凛とたたずむ背の高いひまわりが見つめている。『ひまわり』は子どもたちが色を塗った合作となった。
画集の最後を飾るのは、2021年3月11日の伝承施設「閖上の記憶」の前で、青空へ向けてハト風船を飛ばす追悼のつどいの様子を描いた『記憶』。『記憶』はポストカードになっている。
杉崎さんは「閖上の作品群は区切りがついた。閖上の復興は進んでいると思う。人の心の内面的な復興はまだできていないが、抽象画は描けない。ふるさとの変遷を心に刻み、あの日の歩みを語り継いでほしい」と語る。