10月17日(月)放送

亘理町 すし店「あら浜」 塚部 久芳さん
リポート 佐々木淳吾アナウンサー

東日本大震災の津波で流された亘理町荒浜のすし店、その名も「あら浜」。
ご主人は、震災後5年以上仙台市内でお店を営業していましたが、今年8月にやっと地元荒浜で復活を成し遂げました。
 亘理町はいま、サケとイクラを使った郷土料理「はらこ飯」の季節を迎えていて毎日多くのお客さんで賑わっています。営業を再開したいま、一番先に地元のお客さんが来店。「待ってたよ!お帰りなさい」との言葉を聞いて本当に帰ってきてよかったと塚部さんは心から感じています。
 自分の命に代えても守りたかったお店は、震災時に津波にのまれてしまいました。一時は廃業も考えましたが、ガレキの中にたまたま残っていたお店の古い暖簾や看板、そして一生懸命にガレキを片づける従業員の姿を見つけた時に「戻ってこい」と言われているように感じたそうです。店の再開には時間がかかりそうだと思っていましたが、2011年の8月からは仙台市内のデパート三越から声がかかり、翌年には、仙台市青葉区本町ですし店の営業を始め、今回震災から5年5カ月を経て元の場所、亘理町荒浜での営業再開にこぎつけました。
 全てが順調に進んでいるような印象ですが、塚部さんは仙台市内でお店が繁盛した半面、慣れない場所での営業に疲れ一時は心身のバランスを崩して入院したこともあったそうです。ただ跡取りの息子さんの「俺がこの店を守るから」というひとことで、安心し励まされ現在まできたそうです。
 昔から亘理町に伝わる郷土料理「はらこ飯」を、地元の食文化として先代から受け継ぎ、自身が次世代へ繋いでいく責任感、覚悟も生まれました。復活を成し遂げた塚部さんのお店は11月頃まで「はらこ飯」を求める人で賑わいそうです。お店の制服には「感謝」という文字がプリントしてあります。塚部さんの思いが書かれているような、そんな印象を受けました。

気仙沼支局 重富記者電話リポート
「気仙沼の今」

気仙沼では、市の人口減少対策に取り組んでいます。
今月から移住や定住を目指す人に向け仕事・住まいの情報など特に暮らしに関わる情報を提供する新しい相談窓口「移住・定住支援センター」を開設し運用しています。
この取り組みは、外部から三陸沿岸、気仙沼に拠点を移す人の不安を払しょくする窓口で、従業員は、震災後に他所から気仙沼市にやってきた若者たち。初めての土地での生活の不安を、境遇が一緒の若者たちが同じ目線・同じ気持ちでアドバイスするというものです。お試し移住の前段階の手伝いも手掛けます。
 さらに気仙沼市での現在の一番の課題は「住まいの確保」。実際に気仙沼市は多くの住宅が被災したため災害公営住宅や防災集団移転が多く必要となっていて、簡単に住まいを見つける状況にありません。
そこで、市の調査でわかった市内の空き家を活用する「空き家バンク」を設立、利用希望者に物件を紹介するというものです。現在バンクに登録されている空き家は2件、来月はあと5件ほど増加する見通しだそうです。制度が知れ渡るようになれば、手をあげる家主は増える見込みとのことです。
今後の復興のためにも、空き家バンクの取組が、被災地のいろいろな問題の解決の切り札になることを期待します。

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