Archive for 2020年11月30日

11月30日(月)放送分

仙台市若林区荒浜 
今できることプロジェクト
長南昭弘ディレクター 取材リポート

11月14日、仙台市若林区荒浜で行われた「海と土地の恵みを体感する」バスツアーの様子をお伝えします。このツアーは、「河北新報社」が取り組んでいる震災復興支援企画「今できることプロジェクト」の一環で行われ、「荒浜のめぐみキッチン」が今回現地での受け入れを担当しました。
バスツアーの最初に向かったのは「震災遺構荒浜小学校」。ツアーの参加者はガイドさんの話に耳を傾けるとともに、津波や地震の恐ろしさを痛感し、ショックを受けているようでした。
続いて向かったのは「深沼海水浴場」です。ここでは砂浜に打ち上げられた漂着物などを収集する「ビーチコーミング」に臨みました。実際に参加した人からは、この綺麗な景色を残さなければ、との声もありました。
お昼は「めぐみキッチン」の活動拠点のひとつ「丸い田んぼ」で、焚き火で調理された「新米」「ネギ味噌」「里芋焼き」など、荒浜の「旬」のめぐみを堪能しました。地の物を食べてみなさん元気になったようでした。
最後には、深沼海水浴場で拾った貝殻を使い、キャンドルホルダーづくりに挑戦しました。一日を通じて荒浜を堪能できる仕組みがありました。
震災の現実を受け止めつつ、その土地での楽しみ方を知ることを両立するために、こうしたツアーは今後も重要になると思います。こうした取り組みが地域のこれからを創造していくためにつながる「記憶」を辿り、それが行動につながる「力」となって、復興への歩みにより繋がっていくことを期待していきたいと思います。

11月23日(月)放送分

石巻市鮎川浜 
千々松商店 千々松正行さん
藤沢智子アナウンサー 取材リポート

先週に引き続き、東日本大震災で被災した千々松商店の歩み、そしてこれからを伺いました。
震災前に作っていた工芸品は、ほとんどが一瞬にして流されてしまいました。震災後、家族で材料を拾い集め、少しずつ作品作りを始めました。その中で、「ハンコ作り」がひとつの大きな仕事になります。元々ハンコ作りも学んでいた千々松さんは、震災後の多くの手続きに必要となる「ハンコ」を作り、必要としている人に届けることを決めました。こうして避難所での避難生活を続けながら、千々松さんは被災者のためのハンコ作りから仕事を再開しました。これは仮店舗での営業再開まで続けたといいます。
千々松さんの工芸品のこだわりは、マッコウクジラの歯を使うこと。マッコウクジラの歯は小さくても強度があります。また、使い込むほど味が出て、見た目も変化するそうです。ちなみに、クジラの歯にも虫歯がある場合があり、虫歯だと加工には向かないとのことでした。
鮎川の人たちにとって身近なクジラの歯ですが、おじいさんの代から続いてきたお店を無くすわけにはいかないし、自分で途切れさせてしまうのは悔しいと思ったそうです。震災を乗り越えた今、自分が頑張らなければいけないと強い思いを持たれていました。
現在は新型コロナウイルスが拡大していますが、馴染みのお客様も引き続きらっしゃっているようで、新しい店舗で楽しみながらお仕事をされているようでした。地元の方にとっても、なじみのクジラの歯の工芸品が復活したことは嬉しいのではないかと感じました。
今後はマッコウクジラの歯が安定して入手できるかは分からないので、千々松さんは自分の代でこの商売を終わらせるといいます。単純に技術は引き継ぐことはできても、自分の代で終わりにしようと思っているのは、鮎川というクジラの町で、クジラの歯を使って作るからこそ、その技術に価値があるということなのかと思います。
いつかかなえたい夢として、盃を作りたいと語ってくださいました。津波で流されながらもかろうじて残った貴重な材料から生まれる素敵な作品に、今後も注目していきたいです。

11月16日(月)放送分

石巻市雄勝町
一般社団法人ISHINOMAKI 2.0 阿部拓郎さん電話出演
藤沢智子アナウンサー 取材リポート

10月17日(土)に、石巻市雄勝町で防潮堤をスクリーンにして映画を上映するドライブインシアターが開催されました。主催は震災後石巻で「世界で一番面白い街をつくろう」と様々な活動を続けている一般社団法人「ISHINOMAKI 2.0」です。企画した阿部拓郎さんにお話をうかがいました。
上映された映画は子供向けアニメ映画「すみっこぐらし とびだす絵本とひみつのコ」。当日には午後5時と午後7時の2回上映が行われ、招待した雄勝の小中学生含めてそれぞれ20組が、停車した車内でFMラジオで音声を受信して映画を楽しみました。
非日常的なシチュエーションを楽しんでもらいたいとの思いがあり、以前からドライブインシアターを企画していました。今回コロナ禍での開催であったため、こうした形式での上映会はまさに理想的でした。
この防波堤をたまたま見つけた時に、映画上映にぴったりだと直感したそうです。そこから「雄勝町渚泊推進協議会」阿部さんと出会い、雄勝の方々や役所との調整をして、上映が実現したといいます。「雄勝を好きになってもらう」というテーマも掲げ、上映当日には雄勝町内の飲食店の出店なども企画しました。
防波堤を活用した上映会について、「暗い」「静か」という観点から屋外での映画上映はよかった、防波堤の活用の幅が広がった、などの声があったそうです。今後も雄勝の方々と二人三脚で、積極的に映画上映を行っていきたいとのことでした。

11月16日(月)放送分

石巻市鮎川浜
千々松商店 千々松正行さんへのインタビュー
藤沢智子アナウンサー 取材リポート

千々松商店は、石巻市鮎川浜でブローチ、ペンダント、根付けストラップなど、クジラの歯を使った工芸品を製作販売しています。東日本大震災で被災しましたが、「ホエールタウンおしか」に仮設商店街から移転し、本設営業を始めています。ご主人の千々松正行さんにお店の由来をうかがいました。
昭和3年創業の千々松商店ですが、震災前は海のすぐそばにあり、千々松さんは海を間近に感じながら生活してきたそうです。千々松さんは小さい頃から細かい作業が好きで、お父様の作業を一番そばで見ていました。大学に行き、就職活動を考えた時に、千々松商店を継ぐことを決め、お父様のもとで仕事を始めました。
震災の日、千々松さんは仕事で石巻市内にいて、車の中で一晩過ごしました。次の日歩いて帰る途中に震災の被害を目の当たりにし、自宅被害の不安もこみ上げてきました。お父様も間一髪で避難しており、お互いの無事を確認できましたが、自宅は流されてしまいました。チリ津波を経験していたお父様はその時と同じ逃げ方をして助かったということでした。
次週、仕事の再開から今後の目標についてお話しをうかがいます。

11月9日(月)放送分

仙台市
仙台市立八幡小学校 小石俊聡校長先生
大久保悠アナウンサー 取材リポート

作文宮城とは、宮城県内の小学生を対象に、自由なテーマで作文を書いてもらい、その中から入選作品を載せ毎年発行しているもので、今年で69年目を迎えます。現在県の国語研究部会長として、作文宮城の編集長を務めている仙台市立八幡小学校の小石俊聡校長に、作文宮城への想いを伺いました。
最初は読み物としての要素が大きかった作文宮城ですが、作文には「自分との対話」ができる魅力があるといいます。
東日本大震災の翌年には、子供たちが震災の体験をつづった作文宮城の特別編「あの日のこどもたち」が発刊しました。東日本大震災から10年を迎えようとする中での新型コロナウイルスの感染拡大。小石先生は今だからこそ、今度は新型コロナを受けての子供たちの想いをつづってみることが大切なのではと考えます。休校が続く中で子供たちの考えを掴めなかったからこそ、新型コロナに関する作文はとても貴重だということです。
大きな出来事に対する考えや、子供たちが日々考えていること、当時の子供たちの声を共有し、残していくことが大切だと改めて感じました。子供たちがその時感じたことが記録として残ることで、それは次の世代の子供たちの財産にもなると思います。言葉は消えてしまうものなので、文字にして残すことでより大切にしていきたいです。